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2010年夏推薦図書


明大建築/計画・設計スタジオワークス展 2010 SUMMER

□ 主 催 明治大学理工学部建築学科
□ 期 間 2010年7月29日(木)?9月6日(月)
□ 場 所 明治大学生田図書館「Gallery ZERO」

専任教授 山本俊哉 推薦
学習用:『 アメリカ大都市の死と生 』
ジェイン・ジェイコブス:著 山形浩生:訳
鹿島出版会 2010年 518.8/553//S
「近代都市計画」を批判した都市論として有名な古典的名著。原書が発行されてから50年近く経つが、その内容は現代都市に通じる。彼女は、50年代後半にアメリカの大都市で進められていた住民不在・自動車中心の都市計画を痛烈に批判しただけでなく、安全な街路には常に多数の目があることを指摘し、都市には?用途混合、?小規模ブロック、?新旧建物の調和、?人々の集中により生み出される多様性が必要であることを主張した。故・黒川紀章は原書のうち前半の「都市の特性」と「都市の多様性の条件」を抄訳したが、本書では後半の「衰化と退化の原因」「種々の異なる戦術」を含め完訳している。文章も読みやすい。学生のうちに読んでおきたい一冊である。

作品集:『 陰影のデザイン 都市と建築の照明 』
面出薫、LPA:著
六耀社 2010年 099/4025//S
日本を代表する照明デザイナー 面出薫を中心としたLPA(ライティング・プランナーズ・アソシエイツ)の最新作品集。前著の「都市と建築の照明デザイン」(2005年)では、六本木ヒルズやせんだいメディアパーク、けやきひろば等のプロジェクトを収録。本著は、それ以降の京都迎賓館や表参道akarium等の話題作に加え、上海や香港、プーケット等の海外プロジェクトも多数収録されている。懐古趣味的な「陰影礼賛」は要らないといいきる。シンガポールにも事務所を置き、国際的な活躍が目覚ましい面田ならではの意見であるが、本著のページをめくって最近の照明デザインの世界を堪能した後は、海外でも有名な谷崎潤一郎の「陰影礼賛」も読んでほしい。


専任准教授 田中友章 推薦
学習用:『 場所の現象学 没場所性を越えて 』
エドワード・レルフ:著 高野岳彦、阿部隆、石山美也子:訳
筑摩書房 1991年 ちくま学芸文庫 レ-3-1
人間による場所の経験はいかなるものであるか? それは建築においても重要なテーマだが、この主題を地理学の立場から扱った本書は、1970年代に台頭した人間主義地理学(現象学的地理学)を代表するものの一つである。原題は「Place and Placelessness(場所と没場所性)」で、対象物を直接感応することによる経験をベースにしたコンテクストの解釈として場所の経験を論じ、その後のグローバリゼーションへとつながる大量生産と商業主義の進行の中で発生している現象を没場所性として批判している。現代における建築デザインの立脚点を考える上でも示唆に富んだ一冊である。

作品集:『 Architecture and landscape
  the design experiment of the great European gardens and landscapes 』

Clemens Steenbergen、Wouter Reh:著
Birkhäuser-Publishers for Architecture 2003年 629.2/44//S
建築のデザインが、敷地および周辺領域の物理的特性、とりわけ地勢的特徴と密接な関係を持つのは言うまでもない。その意味で、建築とランドスケープは対立的なものではなく相補的なものといえる。本書「Architecture and Landscape」はその名のとおり、建築とランドスケープの相互関係を主題として扱い、ヨーロッパの著名な都市や庭園の事例を分析した成果をまとめたものである。一連の実験的な図的分析を行うことにより、そこに布置された建築のあり方が地勢からどのように影響を受け、あるいは地勢の潜在性をいかに建築的に転化しているかを明らかにしている。文脈解読の方法論を豊富化する上でも、刺激的な視点を与えてくれる一冊である。

兼任講師 高橋潤 推薦
学習用:『 パサージュ論 』
W・ベンヤミン:著 今村 仁司、三島 憲一:訳
三笠書房 1989年 岩波現代文庫 G-101?105
パサージュ - 内部でもあり外部でもある19世紀末に生まれたこの新しい空間形式に、ベンヤミンは通過移動空間、商業空間、博覧会、ユートピア、幻像、集団の無意識、夢、記憶装置といった性質を観察し膨大なメモを残しました。この本はそれらの断章がまとめられた今でもとても斬新な都市、空間論です。空間と社会の相関関係が鮮やかに描写、分析されたパサージュ論を読破した暁には、柔軟にそして慎重に、さらには様々な分野の知を横断的に援用しながら都市や空間を観察する自分を発見することになるでしょう。

作品集:『 Giovanni Battista Piranesi 』
Luigi Ficacci:著
Taschen 2006年 
幻視、分裂、集積、細密、廃墟、示唆、分析、陰影、収集、、、
18世紀の建築家によるスゴイ版画集です。様々な言説やデザインで言及、参照されるイメージです。これを見て自分の空間想像力の幅を広げよう。

兼任講師 村松基安 推薦
学習用:『 図説 景観の世界 』
ジェフリー&スーザン・ジェリコー:著 山田学:訳
彰国社 1980年 D01C4/099-890/C/KZ
図式的にいうと、ニーチェの思想はプラトンのような透明な理性の立場と対立関係に位置しています。そしてその透明な理性、あるいはキリスト教道徳、ヨーロッパ的心性が如何なる価値顛倒により組み立てられ、浸透させられたかを緻密に解き明かすのが「道徳の系譜」です。プラトン的な透明な理性は建築的思考の代表的な立場ともパラレルです。そしてその代表的な立場が成立したメカニズムを理解することにより、新しい立場を組み立てることが可能なのではないか?ニーチェを読む建築家の多くはそのようなことを考えています。

作品集:『 KATSURA imperial villa 』
Francesco Dal Co、Walter Gropius、Arata Isozaki, Manfred Speidel:著
Electa 2007年 
あまりに有名な桂離宮に関する本2冊です。景観と建築がいかに多様な豊かな関係を創出しているかを、それぞれの視点から写真を通して感性に訴えかけてきます。自由に配置されていそうで、実は非常に綿密に構成され、飛び石一つも疎かにされず、秩序づけられている事がわかります。
特に、「桂 日本建築における伝統と創造」は建築家丹下健三と写真家石本康博が、全体像をあえて見せず、ありのままの「桂」を切り取り、日本文化の美やプロポーション、もののあり方をそこに見いだし、伝統から創造への架け橋を探求しようとした意欲的な写真集です。建築が空間的なパースペクティブのみならず、時間的な広がりを併せ持つこと、そのことが豊かな体験を生むと教えてくれます。


兼任講師 前田道雄 推薦
学習用:『 考具 考えるための道具、持っていますか? 』
加藤昌治:著
阪急コミュニケーションズ 2003年 141/341//S
人の認識は様々な事柄に制限されています。それを逆に考えて意図的に意識のスイッチを切り替えると、それまで見えなかった世界が立ち現れてきます。
この本では広告代理店で働いている著者が、アイディアを捻出して企画化するために試みた方法が「考具」として形式知化されています。そしてこの道具が有用であること以上に、「考具」によって拡張された世界の断片が見せてくれる新鮮な認識は、とてもエキサイティングで興味深いものです。


作品集:『 磯崎新の建築談義 』
磯崎新:著 篠山紀信:写真
六耀社 2001?2004年 520.4/210-1//S?520.4/210-12//S
「もの」は見る側の背景によって、様々に異なった「もの」として存在することになります。このシリーズでは、エジプト時代から20世紀までの、過剰さを特徴とする歴史的な建築にフォーカスしていますが、磯崎新と五十嵐太郎の知識が織りなす広がりと、篠山紀信の対象に入り込むような眼によって、固有のイメージを持つ「もの」として再編されています。それは言い換えれば、古典的な建築をめぐって展開される、現代の建築論とも呼べるかもしれません。


兼任講師 藤野雅統 推薦
学習用:『 今和次郎・民家見聞野帖 』
今和次郎:著 竹内芳太郎:編者
柏書房 1986年 D01E5/099-1441//SZ
今和次郎の大正6年から昭和36年にわたる広範な調査旅行のスケッチをまとめた6冊の私的なスクラップブック『見聞野帖』から、民家関係のものを中心に再編した一冊。「物」としての民家(物質性、空間性)、「器」としての民家(生活様式)の「失われた事象」の記録としての重要性は無論のこと、<線>を積ねるスケッチのプロセスにおける「描かない」という判断、すなわち眼前の情報群の大半を捨象する力によって、写真には決して求め得ないピンフォーカスを得た。写実ではなく抽象。私はこう見た、と言い切るゆるぎない<目の力>に圧倒される。

作品集:『 ハンス・ホライン作品集 a+u1985年2月臨時増刊号 』
エー・アンド・ユー 1985年 520.8/194//S
ハンス・ホラインの思考には、<部分>とそれを取り巻く<状況>における、また<部分>同士における、相互批評性への意識が顕著である。<部分>における形態や材料、ディテール、色彩等の、<状況>における歴史や地形、文化、社会等の、相互のアイロニカルな応答関係(対立と整合、逸脱と同調、転化と不変、異化と同化、等)により多様な総体(建物+周辺環境)を志向する手法は、現代美術の文脈に沿うものであり、あやういバランスの上で美術?建築?都市デザインを横断するメンヘングラトバッハ市立美術館に集約的に提示された。


兼任講師 池村圭造 推薦
学習用:『 風景学入門 』
中村良夫:著
中央公論新社 1982年 中公新書 650
誰しも設計をする時に、いつでも手に取ることが出来るように、机の脇に平置きにしていた作品集というのがあったかと思いますが、一時期の私にとってのそれがこの一冊でした。写真はもとより、ときに印刷で霞んだ収録図面の文字や数字をなんとかして読み取ろうと、眼力を込めながらも半眼でじっとページを睨みつけていたこともしばしばでした。
全編にわたって撮影を行った建築家(齋藤裕氏)の、カーン建築に対する眼差しが窺える写真集としても、とても興味深いものだと思います。

作品集:『Louis I. Kahn houses ルイス・カーンの全住宅 1940-1974 』
齋藤裕:著
TOTO出版 2003年 527/451/B/S
「風景とは、いうまでもなく、地に足をつけて立つ人間の視点から眺めた土地の姿である。」
単純かつ明快、そして、そこが何とも意味深長な本書第一章の書き出しです。視知覚とは切っても切れない空間の操作をなりわいとする(しようとしている)我々にとっては、避けては通れない「美しいとは何か」といった根源的な問いに対し、本書は「風景」を題材にしながら、数量的アプローチと文化的アプローチの両方から、その解明に迫ります。ディープなテーマにもかかわらず全体に平易な文体で綴られていることもあり、多くの人にとって、知覚環境への理解を深める上での一助となる書だと思います。