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2011年夏推薦図書


明大建築/計画・設計スタジオワークス展 2011 SUMMER

□ 主 催 明治大学理工学部建築学科
□ 期 間 2011年7月28日(木)?9月4日(日)
□ 場 所 明治大学生田図書館 Gallery ZERO

専任教授 山本俊哉 推薦
学習用:『 都市の本質とゆくえ J・ジェイコブスと考える 』
宮崎洋司、玉川英則:共著
鹿島出版会 2011年 518.8/589//S

ジェイン・ジェイコブズが50年前に著した『アメリカ大都市の死と生』は、明大建築学科の3つの研究室の必読書となっている。別に申し合わせたわけではない。「都市の本質とゆくえ」が問われている所以だろう。そうした中、本書を推薦することにちょっと躊躇した。『アメリカ大都市の死と生』の解説本だからだ。確かに全訳版は500ページに及ぶのでやや取っ付きにくいが、本書を読んだ後でもいいので、是非全訳版も読んでほしい。


作品集:『 近世在方集住大工の研究 』
高梁恒夫:著
中央公論美術出版 2010年 R521/15//S

津波で壊滅的な被害のあった陸前高田に震災後、たびたび訪れている。被災を免れた土地で目にするのが、気仙大工が手がけた立派な民家の数々。彼らは、出稼ぎをしながら社寺建築や洋風建築も手がけ、災害復旧にも活躍してきた。本書は著者が長年調査してきた気仙大工をはじめ、全国各地に集住する大工の実態を明らかにしたもの。今だから必見の書。

兼任講師 武富恭美 推薦
学習用:『 知の庭園 19世紀パリの空間装置 』
松浦寿輝:著
筑摩書房 1998年 235/93//S

あなたが今いるこの図書館という空間の起源は古代にまで遡るが、ビルディングタイプの誕生には時代の要請があり、その様相は時代と共に変化する。本書は19世紀のパリを舞台に円形閲覧室として出現した図書館の他、美術館、博物館、植物園、動物園などの空間装置を時代背景とともに考察する。現在絶版だが一部を除いて初出は『10+1』であり、同Web上で閲覧可能。著者は表象文化論を専門とする東京大学教授であり、芥川賞受賞作家。

作品集:『 ル・トロネのアルヴァロ・シザ 経路と作品 
Siza au Thoronet le parcours et l'œuvre. 』
エー・アンド・ユー 2010年 520.8/194//S

ロマネスク建築の至宝であるシトー会修道院、ル・トロネを昨夏訪れた。チケット売場からショップを経て、死者の扉から聖堂に入る拝観ルートに違和感を覚え、途中にあった大理石に穿たれた巨大な矢印に導かれるまま、脇へと回った。それがアルヴァロ・シザによるものと知ったのは昨秋発刊された本書による。創建から増築、崩壊、改修を経たル・トロネを読み解き、インスタレーションを行ったシザの思索を垣間見ることが出来る。


兼任講師 村松基安 推薦
学習用:『 光跡 モダニズムを開花させた建築家たち 』
池原義郎:著
新建築社 1995年 523.1/39//S

建築家池原義郎が近代建築を築き開花させた18人の建築家の作品を実際に訪れ、鋭い感性により体感したものをその建築が建てられた背景や社会状況も踏まえ、自らの幼少時や学生時代のその作品にまつわる経験や記憶と織り交ぜながら、その空間性を独特な言葉で綴った本です。18人の建築家の生き方や思想まで深く洞察し、建築のあり方から細部表現に至るまで同じ設計者としての瑞々しい感性で体感したシリアルな空間性を、詩ともいえることばの連なりで表現された文章を読むと、その建築をあたかも読み手の自分が体験したかのように感じられるほどです。
この本の中に紹介されているいくつかの建築を実際に訪れ、追体験することにより、さらに深く建築を学ぶことができることでしょう。

作品集:『 谷口吉生建築作品集 The architecture of Yoshio Taniguchi 』
谷口吉生:著
淡交社 1996年 520.8/109//S

建築家谷口吉生が自ら編集をおこない纏めた初めての作品集です。
社会が求めるものを洞察し、時代の要請に応え、常により新しい高度なものを追求する創造者としての意欲と心構えを持ち続けている谷口の建築に対する研ぎすまされた姿勢や思想が表れています。その後の、ニューヨーク近代美術館の設計へと通じる、時代を超えた建築を求め続ける谷口の決意表明ともいえる作品集です。
敷地の環境や求められる設計条件への単純な形態の組み合わせによる本質的な応答の仕方。素材、採光、プロポーションなどの最も基本的な要素を厳格に用いて構成された建築空間。そこに現れる時間と季節の変化や変化に富んだ空間体験が想像され、多くのことを学ぶことができます。
この作品集の後に出版された谷口吉生の作品集として、下記があります。
 谷口吉生のミュージアム、テレンス・ライリー著、中日新聞・デルファイ研究所(2005)

兼任講師 塚田修大 推薦
学習用:『 建築家・篠原一男 幾何学的想像力 』
多木浩二:著
青土社 2007年 523.1/105//S

ベンチマークという言葉がある。測量に置ける基準点という意味である。建築家にも、ある意味ベンチマークが必要である。それがないと、混沌とした世界で自分自身の建築行為を測ることが難しい。それを与えてくれるのが批評であろう。建築家篠原一男には多木浩二という批評があった。多木の与える様々な批評、篠原本人も知り得ていなかった本質を顕在化させられ、そこから篠原は自分の建築を測り、新しい意味を見い出していったのである。そんな両者のとても羨ましい関係を知ることのできる本である。

作品集:『 篠原一男住宅図面 』
篠原一男:作 篠原一男住宅図面編集委員会:編
彰国社 2008年 527/515//S

建築の本には大抵写真がついている。建築の意味は目に見える空間そのものにあると考えられているからである。でもこの本には写真がない、図面のみである。でも図面だけを眺めていると、不思議と写真では知り得なかった新しい建築の意味が汲み取れる気がする。写真では目に見えるが故に靄掛かって見えることも、図面では純化されクリアに理解できる。篠原は「発表行為と設計活動は等価である」として、発表図面に設計行為と同等のエネルギーを使っていた。それは図面だけで、実際の建築物とは別に建築の世界を建ち上げうることを知っていたからであろう。そんな図面の持つ力が解る本である。


兼任講師 前田道雄 推薦
学習用:『 動きが生命をつくる 生命と意識への構成論的アプローチ 』
池上高志:著
青土社 2007年 461/118//S

誤解を恐れずに単純化して説明すれば、この本は、精密な部品と精緻なコントロールシステムを備えたロボットを目指すと、生命に近づけると考える還元主義的な発想に対して、ひとつの答えに収束しない情報のフィードバックを含んだ非線形なルールで、生命活動を記述しようとする試みの記録である。微細な原子レベルからではなく、適切なレベル(この本では中間層と呼んでいる)で抽象化し生命現象を再現する試行錯誤は、建築において適切な形式を模索するのとも似て、創造的で刺激的なストーリーである。

作品集:『 アルド・ロッシと21作品 』
ミカ・バンディーニ、他:著
エー・アンド・ユー 1982年 520.8/194//S

モダニズムが切り捨てた部分をすくい上げようとしている点では、ロバート・ヴェンチューリと並べられる建築家であるが、ヴェンチューリの理論*が明解で建築表現が多彩であるのに対して、ロッシの著作**は重層的で難解であり建築は禁欲的とすら言えるシンプルなものである。しかし、比較するとロッシの建築に記憶を揺さぶられるような奥深さを感じるのは、建築空間の本質がそこにあるからだといったら、断定しすぎなのであろうか。
*『建築の多様性と対立性』(Complexity and Contradiction inArchitecture、1966年)、『ラスベガス』(Learning from Las Vegas、共著 1972年)等
**『都市の建築 (L'architettura della città)』等


兼任講師 池村圭造 推薦
学習用:『 スラムの惑星 都市貧困のグローバル化 』
マイク・デイヴィス:著 篠原雅武、丸山里美:訳
明石書店 2010年 368/93//S

世界各地におけるスラム化の進行を、統計データを引用しつつ現代都市の本質的な姿として描いたレポートです。
スラムという刺激的な語感で綴られた本書の内容は、ともすると、我々にとって実感に乏しいことのように感じられるかも知れません。しかし、その実情の如何や自身との関わりの有無を問う前に、まずは、このようなレポートが現に日常に存在している事実を、率直に受け止めることが大切な気がします。私的な感受や把握の枠を超えたことに耳を傾けてみるのも、時には必要なことでしょう。

作品集:『 MUTATIONS 』
Rem Koolhaas、Stefano Boeri、他:著
Actar  2001年 518.8/592//S

都市を記述しようとすることは、斯くも危ういことなのでしょうか?
それは、都市という言葉の示すものが、必ずしも具体に即さない抽象概念だからなのでしょうか?
ひとの欲の利で出来ているのが都市なのだとしたら、それを人智で制御することは適わないのでしょうか?
そして、そんな得体の知れない領域の拡大に、建築は翻弄され続けるだけなのでしょうか?

そう思って本書を眺めてみると、まるで地獄絵図のようにも見えてきます。


専任准教授 田中友章 推薦
学習用:『 廃棄の文化誌 ゴミと資源のあいだ 』
ケヴィン・リンチ:著 有岡孝、駒川義隆:訳
工作社 1994年 519.3/16//S

「都市のイメージ」や「敷地計画の技法」で知られるケヴィン・リンチの最後の著作である。「廃棄に満ちた世界」と「廃棄のない世界」という2編のファンタジーから導入される本著では、人間が都市で生活する上では不可避となる「廃棄物と廃棄の過程」を多面的な角度から扱い、論じている。人間の感覚と形態や環境との関係を生涯変わらぬテーマとして扱ってきたリンチが、晩年にこのようなテーマに辿り着いたことは興味深い。建築することは、環境に対して人為的な変形を加えることに他ならない。それに必然的に付随するバックサイドの問題を同時に扱ってこそ持続的発展が可能となる訳で、3・11後の世界を考える上でも多くの示唆に富んだ書物である。

作品集:『 Case Study Houses 』
Elizabeth A.T. Smith:著
Taschen 2002年 099/3669//S

1945年から66年にかけてロス・アンジェルスを中心に展開されたケース・スタディ・ハウス・プログラムの全貌を紹介した作品集である。「Arts & Architecture」誌が主導し、ノイトラ、イームズ、サーリネンなど数多くの著名な建築家が参加したこの実験的住宅プログラムは、第二次世界大戦後の住宅需要に対応するため、工業部品やプレハブ技術等を組み込んで、経済的・効率的な設計・施工モデルを模索するものであった。工業化時代の新しい建築のあり方を示したイームズ邸もCSH#8として建設されたものである。デザインが「建築をつくること」と深く結び付いていることを考える端緒を与えてくれる書物である。