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2014年夏推薦図書


明大建築/計画・設計スタジオワークス展 2014 SUMMER

□ 主 催 明治大学理工学部建築学科
□ 期 間 2014年7月31日(木)?9月4日(木)
□ 場 所 明治大学生田図書館 Gallery ZERO

専任教授 田中友章
学習用:『 人間の街 : 公共空間のデザイン 』
ヤン・ゲール:著 北原理雄:訳
鹿島出版会 2014年 518.8/715//S

「建物のあいだのアクティビティ」「屋外空間の生活とデザイン」などの著作をとおして、都市の公共空間と人間のアクティビティに関する実証的な論考を展開してきたヤン・ゲールの2010年の著作(2014年和訳版)である。都市の公共空間のあり方について、それを利用し体験する人間を中心において、そのスケールや感覚に根ざした場所として捉え、そのアクティビティ、空間、建築、その設えがどのような質を獲得すべきかを具体的に論じている。複数の建築物と屋外空間から構成される都市空間の何たるかを考えるために適確な道標となる書物である。

作品集:『 Philharmonie : Berlin 1956-1963 : Hans Scharoun 』
Wilfried Wang, Daniel E. Sylvester:編

Tübingen : Ernst Wasmuth Verlag 2013年 520.8/393/B/S

建築家ハンス・シャロウンの代表作でもあるベルリン・フィルハーモニーについて、その設計や建設の過程を詳細に紹介した作品集である。この建築は、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の本拠地でもあり、特徴的な5角形平面をもつワインヤード型の大ホールを擁して、世界有数のコンサートホールとして知られている。建築家の着想やコンセプトが、最終的に物理的存在としての建築へと、その実現のプロセスの中でどのように具現化していくかを、施工段階の検討を含む多数のドローイングや写真と共に知ることができる。1つの作品を巡って、建築デザインの深さと道程を示してくれる書物である。

専任教授 山本俊哉
学習用:『 白熱講義 これからの日本に都市計画は必要ですか 』
蓑原敬・饗庭伸・姥浦道生・中島直人?野澤千絵・日埜直彦・藤村龍至・村上暁信:著
学芸出版社 2014年 518.8/716/B/S

都市計画のあり方を根底から問う著書が多い都市計画家・蓑原敬さんが新進気鋭の若手建築家・都市計画家(学者)に講義、あるいは問いに応えてディスカッションした話題の新刊本。私も30代の頃、蓑原敬さんと一緒に仕事をし、「文脈解読とデザインのあり方」についてディスカッションしたことがあるが、何度も読み返してディスカッションしたくなる。建築学科の3年生なら読んで理解できるはず。この夏休みの必読書の一冊だ。。

作品集:『 時代の地図で巡る東京建築マップ 』
米山 勇:著 伊藤 隆之:著・写真
エクスナレッジ 2013年 521.6/54//S

建築物を見て歩く「まち歩き」の必須アイテムは、地図とガイドブック。歴史的建造物を見るなら、これに古地図が加わると、理解に深みが増す。類似本は結構あるが、まち歩きのエリア別に江戸切絵図と戦前の街並みを描いた赤図と現代地図が見開きで掲載されているのが嬉しい。建築や歴史の解説もわかりやすい。建築を学んでいなくても取っ付きやすい。書を捨てよ、ではなく、書を持って町へ出よう。


兼任講師 武富恭美
学習用:『 粗い石 : ル・トロネ修道院工事監督の日記 』
フェルナン・プイヨン:著 荒木亨:訳
形文社 2001年 953/207//S

作品集:『 中世の光と石 : ル・トロネ修道院 』
磯崎新・篠山紀信・三宅理一:著
六耀社 1980年 520/188//S

ル・トロネ修道院はフランス南部プロヴァンス地方にあるロマネスク建築の至宝。
『中世の光と石 ル・トロネ修道院』は篠山紀信氏による撮影。
『粗い石』は修道士でもある工事監督が、断片的な設計図をもとに設計を行いつつ、修道院の建設を進めていく苦労と葛藤を日記形式で描く小説。著者は建築家。
同じく12世紀末、日本では重源が東大寺の再建を担う。建築史家伊藤ていじ氏による小説『重源』もおすすめ。

兼任講師 高橋潤
学習用:『 磯崎新建築論集 5 「わ」の所在 』
磯崎新:著
岩波書店 2013年 520.8/386-5//S

日本の伝統建築を閉じた輪の中で語るなかれ。島国という閉鎖性をアジアの中で相対化し、伝統を現代社会の価値観のもとに再解釈する。磯崎新だからこそ成せる広範で多角的な「わ」の位置づけは一読の価値あり。客観的、相対的に空間を認識せよ。
https://opac.lib.meiji.ac.jp/webopac/catdbl.do?pkey=BB00700929&initFlg=_RESULT_SET_NOTBIB
作品集:『 よくわかる日本建築の見方 』
中川武:監修
JTBパブリッシング 2012年 521.8/187//S

建築を実際に訪れ、その空間を体験することはとても重要な作業。この本を手に日本中の素晴らしい伝統建築の見聞の旅に出よ。
主観的、絶対的に空間を経験できることこそが、建築の優位性であり可能性なのだから。


兼任講師 塚田修大
学習用:『 中野本町の家 』
後藤暢子、文子、幸子:著
住まいの図書館出版局 1998年 527/206//S

建築の成り立ちに関する本は数有れど、建築の消滅にまつわる物語を描いたものはこの本だけではないか。1997年、伊東豊雄が設計した「中野本町の家」が取り壊された。その際に住まい手の母娘3人がこの家の消滅に関するそれぞれの思いを率直に語った。なぜ壊されるのか?という問いを通して建築の意味が逆説的に明らかになっている。それはあまりにも「重いもの」だが、建築家になるにはある種の覚悟が必要であることが思い知らされる本である。

作品集:『 伊東豊雄:ライト・ストラクチュアのディテール 』
伊東豊雄建築設計事務所:編著
彰国社 2001年 525.1/206//S

学生諸君は建築の「かたち」や「デザイン」には興味を持つが、ディテールに興味を持つことは少ないように思う。建築をつくるリアリティに直結するディテール、そこから距離をとっていては始まらない。ただその理由も解らないでもない。世の中でディテールと呼ばれているものの過剰さ、全体とディテールの乖離、ディテールの為のディテールになっている現状がそうさせているのではないか。伊東のディテールは少し違う。全体とディテールが等価である。全体の為にディテールがあり、ディテールによって全体が再定義される。初めて読むディテールの本として敢えてこの本をおすすめしたい。


兼任講師 土屋辰之助
学習用:『 犬と鬼 』
アレックス・カー:著
講談社 2002年 302/643//S

著者のアレックス・カーは幼少期とそれ以降も度々日本で過ごし、現在は徳島県祖谷にて活動を続けている。ヨーロッパやアメリカなど海外を旅していると都市から都市へ移動する際の車窓からの風景は畑や丘陵、平原が続き、美しい自然をみることができる、しかし私達の日本では延々と建築や土木構造物が続き、それはとても美しいとは表現できるものではない。何らかのかたちで将来、建築に関わるのであれば、土木建設や行政に関する日本の「異常さ」を知っておく必要があると思う。本書は淡々とそのような日本人では口にしたり、文字にしたりしにくい事実を述べている。「犬と鬼」というタイトルはどのような意味か。読んで確かめてみるとよい。

作品集:『 日本の屋根 』
伊藤ていじ:著 高井潔:写真
叢文社 1982年 D01D2/099-1084//SZ

学生の頃、建築史や様式史を勉強すると西洋の建築史は様式の変遷も華やかで特徴もわかりやすいのに比べて、日本の様式史は何とも微妙な違いで地味でわかりにくい。大学院の講義で藤井恵介先生の授業があり、密教建築の組物の外部と内部の違いについて語られた際には、なんてマニアックなんだと思った覚えがある。組物もよく見ていけば本当に面白いのだが、まずは屋根だと思う。二条城の反りに対しての桂離宮のむくりは大きな動きでわかり易い。本書に掲載されている中には既に存在していないものも多いと思うが、その土地土地の屋根の素材やかたちが豊富に集められていて、飽きない。ひとつの建築エレメントに注目して様々な建築を横断してみるのもよい。

兼任講師 宮部浩幸
学習用:『 場所の現象学―没場所性を越えて 』
エドワード レルフ:著 Edward Relph:原著 高野 岳彦・石山 美也子・阿部 隆:翻訳
筑摩書房 1999年 ちくま学芸文庫 ; レ-3-1

「人間が必要とするのは都市の切れ端ではなくて「場所」である」。空間創造にたずさわるすべての人に知ってほしいメッセージ。我々が作り出す空間が長い時間のなかでそこにいる人々にどのように位置づけられるのか。それは愛着をもって使い続けられるのだろうか。常に考えなければならない問いである。

作品集:『 Lina Bo Bardi 』
Barry Bergdoll:はしがき Zeuler R. M. de A. Lima:著
Yale University Press; New.版 (2013/11/26) 2013年 523.6/8//S

ワールドカップで少し身近になったブラジルの風景。ポルトガル植民地時代から現在に至るまでの建築が街並をつくっている。リナ・ボ・バルディはイタリア出身であるがブラジル文化に根を下ろし、モダニズム建築から伝統建築の改修まで幅広く手がけた女性建築家。彼女のモダニズム建築と改修建築は見た目にはかなり異なる空間であるが、その根底に共通して横たわるものがあるに違いない。オスカー・ニーマイヤーを押さえたら次はリナ・ボ・バルディ。