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2012年度 建築設計2 イヴニングトーク(第2回)


6月12日(火)の17時より、第2課題の「明治大学 IKUTA CAMPUS FORUM」のヒントになるようにと、2年生を対象として兼任講師の先生方による2階目のイヴニングトークが開催されました。今回レクチャーしてくださったのは、安部先生、安田先生、古見先生の3名です。

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安部先生
 「建築って何だろう」という問いかけから始まり、安部先生の様々な取り組みを通して、「建築とは何かを考え続けることが建築なんだ」というメッセージを学生に伝えてくださいました。
 東日本大震災に見舞われ、日本人全員が建築とは何か、何をつくればよいのか、と考えさせられる状況の中で、安部先生は子供たちの遊び場をつくる取り組みを始められました。子供たちが創造性を培う場として、そして子供から大人へと広がるネットワークをつくるツールとしての遊び場をつくられました。
 また、瀬戸内海に浮かぶ豊島という小さな島での取り組みを紹介していただきました。オリーブなどの農作物を全国へと出荷するこの島では、廃棄物が多く流れ着く問題により、「豊島産」をアピール出来ない歯痒さを抱えていたといいます。この豊島に、安部先生は「島キッチン」という名前の舞台をつくられました。ここでは、島のお母さん方の料理が振る舞われ、島の様々な催しが開かれます。島の住民たちのネットワークづくりの場として、また、観光客を迎え入れ、島の農産物をアピールする場として、今では多くの人々に愛される場所=建築となっているようです。島の人々とのワークショップによって生まれた「豊島の歌を歌おう」という歌は、島全体に広がり、島の誰もが知っている歌になっています。島キッチンでこの歌を歌う子供たちとそれを手拍子しながら聞き入る島の人々の様子を動画を見せていただきましたが、とても印象的な光景でした。
 安部先生のお話には、建物をつくるだけが建築ではない、というメッセージが込められていました。舞台をつくってほしい、という依頼から跳躍して島の様々な活動を促してきた「島キッチン」のように、いろいろな考え方で建築を考えることの重要性を教えていただきました。

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安田先生
 安田先生が手がけた住宅作品の紹介を通して、建築家が建築へと取り組む姿勢について教えて頂きました。
 「静岡の家」という作品では、住宅の前面にあった鶏舎をリノベーションして、住宅と庭とガレージを再編成するような作業場とする設計を紹介してくださいました。また、静岡の家は安田先生のご実家ということで、近親者がクライアントである場合の難しさがあったようです。遠慮のない激しい議論が交わされたというエピソードを交え、建築家とクライアントがどう関係を築いていくか、という実際に形にするまでの目に見えない過程について、学生にとって貴重なお話をいただきました。
 また、若い頃の実務で失敗した体験を紹介していただきました。住宅を建てる際の主要な材料である木材を使用する際、使い方を間違えて腐ってしまったというエピソードです。建築は弱い存在である人間を覆うものとして、少なくとも人間よりも間が息する必要があるといいます。設計者は常に謙虚でなければならない、というメッセージをいただきました。
 建築とは何か、というお話をされた安部先生に対して、安田先生のお話では、建築家はどうあるべきか、ということが問いかけられました。クライアントや大工さんとのコミュニケーションや材料の使い方といった、学生にとってなかなか得がたい貴重なお話から、設計を単なる学校の課題としてではなく、よりリアルなものとしてイメージできるよい機会となったのではないかと思います。

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古見先生
 第一課題での学生の様子から、古見先生が手がけた住宅作品の紹介を通じて、設計のプロセスついて講義して頂きました。
 設計はレギュレーションを作る作業。その場の思いつきで作るといい加減なものになってしまうため、プログラムの積み重ねの上にコンセプトが生まれる、という考え方の順序を教えて頂きました。
 建築として成り立ちながらも、もう一段階ジャンプアップして面白いものにするにはどうすれば良いのでしょうか。古見先生は、プログラムを解く積み重ねの過程で生まれ、発見した「何か」を徹底的に展開していくことで新しい建築が生まれうる、といいます。これが徹底できていれば、その「何か」がレギュレーションとして働いたということになるのでしょう。重要なのは、その徹底化のプロセスで必ず困難に突き当たるけれども、その困難が起こらないように逃げるのではなく、困難に向き合い、レギュレートしきってみせることだと古見先生はおっしゃいます。
 「ハウスミニ」は古見先生の設計による非常に小さな住宅です。家が小さいと階段で全てが決まる、ということから階段に着目し、200案ものスタディを重ね、空間の分節から収納と言った事までを階段と連動して考えられたそうです。
 続いて「カミウマ」という作品では、クライアントが生活の中のモノに固執していることを感じ取り、モノで空間をつくっていくというアイディアを展開することにされたそうです。モノの配置をスタディし、それに応じて空間が決定する、という通常とは逆転したレギュレーションのあり方を徹底されたわけです。
 こうしたお話には、設計者が何に着目するかで建物あるいは空間は全く別のものになる、というメッセージが込められていました。設計のレギュレーションたりうる「何か」に気づくことの重要性、そしてそのために粘り強いスタディに堪えることの重要性を教えて頂きました。

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TA 石井