明治大学 MEIJI UNIVERSITY

2022年度:計画・設計スタジオ3(4年次・春学期)

「SDGs時代のパビリオンを考える」
2025大阪万博におけるケーススタディー

地球温暖化やカーボンニュートラルの実装が求められる現在、2025年には大阪で万国博覧会が開催される。万国博覧会自体の存在意義、短期間のイベントに投資する妥当性、国際社会に与える文化的意味など、議論が充分なされているとは言えず、決して日本国民全体が支持しているとは思えない。また総合テーマである「いのち輝く未来社会のデザイン」も抽象的で今一つあいまいである。しかし、そういう時代だからこそ、リサイクル可能な新しい構造形式をイノベーションにより創造し、環境負荷が少ない建築空間を探求することが求められている。
万国博覧会を開催しないというのも一つの選択肢であるが、開催されるという前提に立って、もっとも先進的で次代のモデルとなる建物を企画・デザインし、スタディーすることの意味は大きい。
本スタジオはリアルタイムに進行する実際のプロジェクトの進行をにらみつつ、想定された敷地におけるテーマ館、国別のパビリオン、企業関係のパビリオンなどを各自選択し、設計デザインする。また、最終成果物によるデザインプロポーザルを想定し、構造、環境、材料、デジタルツールの利用、空間の連続性などを総合的に解決した企画書を作成し、具体的なデザイン提案を行う。

●担当教員:
小林正美・亀田康全(兼任)・平岩良之(兼任)・菅健太郎(兼任)

●授業の概要・目的:
本演習の獲得目標は,以下の4点である。
1.建築設計能力の発展のために必要となる能力の習得
2.設計に関わる与件を前提に,説得力のある設計をまとめる能力の習得
3.設計提案を的確に表現・伝達する能力の習得
4.建築に関わる多様な価値を前提に,周辺領域の展開を視野に入れた発展のために有用な専門的能力の習得

このため,本演習では以下の獲得目標を掲げる複数のスタジオを設定している。
1)複数の機能の関連性を的確に把握し,複雑な設計条件を解決しつつ設計を行う能力
2)ディテール,材料,組み立て方などを踏まえつつ,小さなスケールの空間やプロダクトの設計を行う能力
3)意匠・構造・設備それぞれの分野の知識を総合し,合理的かつ美的配慮に富む設計を行う能力
4)クライアントやユーザーの意見を集約し,的確な設計提案としてまとめる能力
5)既存の都市や建築のコンテクストを解読し,問題解決のための有用な設計提案をまとめる能力

●優秀作品の学生一覧:
服部友香|王柳カン|末吉祐貴|山本暁

優秀作品

※ STUDENT WORKに掲載されている作品はいずれも各学生個人の著作物です。許可のない複製・拡散・二次利用はご遠慮ください。

 

他の科目

  • 建築設計スタジオ3 優秀作品:服部友香
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建築設計スタジオ3 優秀作品

服部友香

「ひとつ屋根のした」で食事をすることで、誰かと食べる喜びを再認識する。その背後に潜む食の格差、問題を6つのボリュームを通して空間として可視化し、考えるきっかけをつくりだすようなパビリオンを提案する。


講評

食をテーマとした円形のパビリオンを有機的に並べることに苦心していたようだ。結果的には、円柱形の壁の粗密をコントロールし、極めてうまい形で現代の縁側空間を創造していたように思われる。


  • 建築設計スタジオ3 優秀作品:王柳カン
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  • 建築設計スタジオ3 優秀作品:王柳カン
  • 建築設計スタジオ3 優秀作品:王柳カン

建築設計スタジオ3 優秀作品

王柳カン

昨今では仮想現実・複合現実の関連技術が飛躍的に発展し、これから私たちの生活様式が大きく変わって行くでしょう。2025大阪万博という未来の生活と向き合う最高の場を借りて、ル・コルビュジエによるモデュロール数に基づき、仮想現実・複合現実技術と人間の身體性の折り合いを求めようとし、計画案を練り上げました。


講評

計画の最初の段階から、仮想現実を媒体とした独自のディジタル空間を構成するようにしていたようだ。もう少し、デジタル的な世界とモデュロールを用いた空間とのオーバーラップを具体的に示せればよかった。


  • 建築設計スタジオ3 優秀作品:末吉祐貴
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  • 建築設計スタジオ3 優秀作品:末吉祐貴
  • 建築設計スタジオ3 優秀作品:末吉祐貴

建築設計スタジオ3 優秀作品

末吉祐貴

2025年開催の大阪万博において、CLTを用いたバラエティのある縁側空間を創出する。現代の木造先端技術の発信•日本特有の縁側空間の体験を促すパビリオンを提案する。この建築により人々は日本的空間の心地良さを再認識する。


講評

折れ板のような木造の板の連なりと地面との関係の中に多様な空間をを生み出し、魅力的な場を作り出そうとしている。


  • 建築設計スタジオ3 優秀作品:山本暁
  • 建築設計スタジオ3 優秀作品:山本暁
  • 建築設計スタジオ3 優秀作品:山本暁
  • 建築設計スタジオ3 優秀作品:山本暁

建築設計スタジオ3 優秀作品

山本暁

埋め立て地に対する負の側面を、万博による夢や平和といった希望的なイメージで上塗りすることを批判したパビリオンである。半地下と頭上の仮想モノリスによって、ゴミの量を補完的に認識してもらう提案である


講評

全体に板状のスペースを浮かせた分かりやすい構成であるが、結果的には様々な空間体験ができるような魅力的なエキジビションスペースが作り出されている。